青森県内の司法書士有志で組織する、司法書士事務所の広域ネットワーク

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2022年3月より、地元紙であるデーリー東北新聞の「知見創見」というコラムを担当することになりました。2015年〜2017年も担当していましたが、出戻りです。同じ記事ですがこちらにも転載します。18歳を狙った悪徳業者は必ず暗躍します。気をつけてください。

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『4月1日、大人になる君へ』

18歳の君。今は子どもだけど、令和4年4月1日午前零時、君は大人になる。

大人ってなんだろう。いつ大人になるのだろう。大人になったら責任ある行動をと言われるけど、「責任ある行動」ってなんだろう。就職してお金を稼ぐこと?自立して一人で生活すること?結婚して子どもに恵まれること?親に生活費を仕送りすること?答えを見つけることができないうちに、働いていなくたって、自立出来ていなくたって、寝ていたって、自然に大人と呼ばれる存在になっていく。

ピーターパンのように子どものままでいられるネバーランドは用意されていない。大人になることについて漠然とした不安を抱く子もいるかもしれない。ただ、子どもと大人の境界線はあいまいで、大人っぽい子どもがいれば、子どもっぽい大人がいるように、その時々の行動を切り取り、「それは大人とはいえない行動だ」と言われる存在になっていく。そして年を重ねるにつれて、いつしか常に大人としての振る舞いを求められるようになる。「まだ子どもだから」との許しを得る機会がなくなる状態を世間一般には大人と呼ばれる状態なのだろう。

しかし法律上の大人の定義は毛色が違う。平成30年6月に成年年齢を20歳から18歳へと変更する民法改正がなされ、本年4月から施行される。つまり、令和4年4月1日に18歳の人は法律上大人となる。18歳の人も、人生のベテランである60歳の人も同列に扱われる。大人になると一人でできること(契約)がたくさん増えてくる。例えば、スマホを契約したり、アパートを契約して一人暮らししたり、嗜好品を大人買いしたり、バックパッカーとして世界中を旅してみたり、誰かと結婚したり。反面、大人となったことでできなくなることもある。未成年者が親権者の同意を得ずに契約した場合には、民法で定められた未成年者取消権によってその契約を取り消すことができるが、大人になって結んだ契約は一方的にやめることができない。

Aは自宅でスマホを見ていたとき、キレイになるサプリが1円で売られていた。説明文をよく読まずに購入ボタンをポチッと押してしまった。後に送られてきたメールには、サプリの定期購入手続が完了したと記載されており、初回は1円だが、2回目から毎月5万円の支払いをしなければならず、1年間はやめられないと書かれていた。Aが17歳の子どもであれば、親権者による未成年者取消権を行使して契約をやめることができる。一方で、Aが18歳の大人であれば、契約をやめることはできない。お金は何とかして支払わなければならない。「よく読んでなかった」「お金がない」なんて言い訳は通用しない。大人としての責任を果たさなければならない。
私の事務所にももっと早く相談に来てくれていたらより良い対応できたと思う人は多い。人生につまずいた時、行き先がわからず一旦立ち止まった時、その道の専門家に相談して欲しい。これからの人生、一人で解決できないことは思いのほか多いのだ。いかなるトラブルも一人で考えて一人で行動するのが大人の対応ではない。トラブルの種類によって、適切な専門家にアドバイスを求め、歩むべき道を自ら決定することこそが大人の対応である。

かつてルソーは「私たちは無知によって道に迷うことはない。自分が知っていると信じることによって迷うのだ。」と言った。失敗を重ねて人生が豊かになっていく寅さんみたいな生き方も憧れるが、法的トラブルはそうもばかり言っていられない。

「相談する力」を身につけよう。いつか訪れる人生の窮地から脱する力となるはずだ。
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2020年11月20日民事法研究会より「新しい死後事務の捉え方と実践」という書籍が発刊されました。私もその執筆者の一人です。この本は司法書士、弁護士向けの実務書です。

2020年11月20日発刊

近年相続についての関心は高まる一方です。
司法書士は相続による不動産の名義変更登記だけが仕事ではありません。

生前贈与や遺言書の作成。
民事信託スキームの立案、契約支援。
認知症対策としての成年後見・任意後見制度の利用支援。
身寄りのいない方の死後直後の事務(葬儀や医療費などの支払い、施設の明け渡しなど)に関する支援。
金融機関などの預貯金の解約や相続人への分配を行う遺産承継業務。
相続人の協議がまとまらない場合の遺産分割調停申立書作成。
家庭裁判所への相続放棄申述書の作成。

皆さんが想像するより、司法書士はいろいろなことができるのです。

相続対策は早すぎることはありません。
ちょっとしたことでも構いません。
是非ご相談下さい。

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自筆証書遺言書保管制度がスタートしました!

2020年7月19日

 

自筆証書と公正証書、結局どちらがよいの?

2019年7月1日に施行された40年ぶりの相続法改正。相続のルールが大きく変わりました。実はこの改正は段階的に施行されていったのですが、このほど自筆証書遺言書保管制度が2020年7月10日に施行され、全ての改正法が施行となりました。自筆証書遺言書の保管制度では、法務局が遺言書を保管することになるため紛失の恐れがなく安全性はとても高いと考えられています。一方で、同じく安全性が高いとされる公証役場で作成・保管する「公正証書遺言」がありますが、今後遺言書を作成するにあたり、「結局どちらを選択するべきか?」を司法書士の目線から考えてみたいと思います。

遺言書は作った方が良いのですか?

「そもそも」ですが、遺言書は作るべきか。司法書士の目線から答えるなら「作るべき」です。実際、多くの方が遺言書を作っておらず、相続手続きも相続人全員の合意のもと進められているのが大半だと思いますので「作らなくても大丈夫だった」というのが大半でしょう。わかば法務事務所にも年間100件を超える相続の相談を受けてつけていますが、遺言書がある場合は1割程度です。
ただ、ご相談をいただく1割程度はいわゆる「争族」であり、相続人間の協議がまとまらず、時間と費用がかかるケースがあります。預金を解約できない、不動産の名義が変えられず売却ができないなど、相続手続後の生活に大きな悪影響が出てしまうケースがあります。遺留分などの問題(相続人間の調整)は残りますが、とりあえず、預金や不動産などの相続手続が滞りなく進めることができる「遺言の存在」はとても大きなものです。
巷の「終活」ブームに乗り、自筆証書遺言は以前よりも多く書かれるようになったと思います。ただ、自筆証書遺言書には次のようなデメリットがあり、公正証書遺言の方が優れているとされていました。

自筆証書遺言のデメリット

債権回収会社からの手紙にはご注意を

2018年9月12日 公開 / 2020年11月26日更新

 

最近こんな相談が増えています。少し長文ですが、お付き合い下さい。


☆相談内容☆
突然自宅に「督促状」が届いた。差出人は株式会社〇〇債権回収。
よくよく考えてみると、それは10年以上前に事情があって支払うことができなくなり、長期間そのままになっていた消費者金融からの借金であることを思い出しました。この10年間全く連絡も来なかったし、手紙も来なかった。そしたら、今回債権回収会社からこの手紙を受けとりました。支払わなければならないのでしょうか?---終わり

「消滅時効」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
AさんがBさんに10万円を貸したとします。1年後に一括で全額返済するという約束でした。しかしながら、約束の日を過ぎても返済はありませんでした。それから15年後、Aさんは街でばったりBさんに出くわしました。AさんはBさんに10万円を支払うように請求しましたが、Bさんは「そんなの時効だから支払わない」と言いました。AさんはBさんから10万円を返してもらえないのでしょうか?

答えは「返してもらえない」です。
AさんはBさんに対して「お金を返してもらえる」という「債権」を有していますが、その債権は10年間行使しないと時効により消滅してしまいます。ただ、Bさんが本当にお金がないためAさんが10万円を返してもらえないのに、10年経つと権利が消えてなくなってしまうというのではAさんがかわいそうです。

そこで法律は、①Bさんを相手に裁判をする、②BさんがAさんに対して借金があることを認める、③BさんがAさんに対して一部返済するということがあれば、時効の進行がリセットされ、その時からまた10年間がスタートします。これを「時効の中断」といいます。個人間のお金の貸し借りによる債権の時効は10年ですが、一方又は双方が商人の場合(営業としてお金を貸している場合)には5年と短縮されています。

さて、今回の相談ですが、お金を借りて返済をしていなかった期間が10年以上ということですし、まして相手は消費者金融(商人)ですから、時効期間はさらに短く5年となります。つまり、この方は相手方に対して消滅時効を主張(援用)すれば、その借金は返済する必要はありません。

なかには督促状に書かれている連絡先に電話をして、借金のあることを認め、分割返済の約束を口頭でしてしまってから相談に来る方もいます。このような場合は、先に説明したとおり、時効の中断事由に該当するので、たとえその時が5年以上経過していた時点だとしても、借金のあることを認めた時からまた時効(5年)がスタートしてしまいます。

債権回収会社の中にはそのような消滅時効が完成した大量の不良債権を安値で買取り、督促状を送付し、消滅時効が完成していることには触れず借金の存在を認めさせ、分割払いの約束を取り付けるケースもあると聞きます。

借金が存在することはまぎれもない事実ですから、消滅時効を援用することが正解というわけではなく、借金を返済するという選択をすることも当然あり得ます。

ただ、借金の存在を認めさせた後は消滅時効の援用をするという選択ができなくなります。債権回収会社からの督促状を受けとられた場合には、その会社には電話をせずに、まずはお近くの司法書士、弁護士に一度相談してから、その後の方針を決められた方がよいと思います。

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わかば事務所のニュースレターvol.11(最新号)ができました!

当事務所では、【不】定期にお取引をいただいている企業様や金融機関様に対して、ニュースレターを発行しご郵送しております。

毎回相談を受けた法律問題の解説をメインに構成しておりますが、今回のテーマは「寄与分(相続問題)」と「知っておきたい判例解説(認知症高齢者の徘徊による事故)」「事業用借地権」の3本立てです。これまで原稿書きから校正まですべて私一人でやってきましたが、紙面を充実させるために、青森オフィスの葛西司法書士にも原稿書きを協力してもらいました!

年に3~4回程度しか発刊できていないのですが、結構作るの大変なのです。ただ、企業様や金融機関様などに届けると「いつも読んでいますよ」と声を掛けられ、嬉しい反面、「やめられないし適当なものは作られない」という気持ちになります。

下記アドレスをクリック、又は上記タグの右端「ニュースレター」の部分をクリックしていただけると、最新号のニュースレターをご覧頂けます。
http://aozorahoumu.net/download/wakaba_news_11.pdf

お暇な時に、気分転換で読んでみて下さい!!

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不動産競売でアパートを落札した際の注意点

 

1.「3点セット」って知っていますか?

不動産競売に際して物件を落札しようとする方がまずやらなければならないことがあります。それは、いわゆる「3点セット」の熟読です。全国の不動産競売の情報は裁判所が運営するサイトから情報を入手することができます。下記サイトをご参照下さい。「3点セット」とは、次の文書のことをいいます。この3点セットを熟読しないとトラブルに巻き込まれる可能性もあり、大変重要な書類です。
①物件明細書
競売にかかる不動産の表示及び買受人(競落人)が負担することとなる他人の権利、物件の占有状況などの特記事項が記載されています。特に「買受人が負担することとなる他人の権利」の部分が重要です。
②現況調査報告書
対象不動産の「今」が記載されています。誰が使用しているのか、空き家なのか。物件の関係者からの聞き取り事項。対象物件の案内図、土地の公図や建物図面、そして現況(外観・内部)の写真が掲載されています。
③評価書等
不動産鑑定士による対象物件の評価額が記載されています。
(不動産競売物件情報サイト:http://bit.sikkou.jp/xxW00_sv_0000Action.do

2.「買受人が負担することとなる他人の権利」とは

①物件明細書に「買受人が負担することとなる他人の権利」という欄があります。この欄が「なし」と記載されている場合には、実際に使用(占有)している人がいたとしても、手続を踏めば法的に退去させることができます。仮にアパート1棟を落札し、9部屋のうち7部屋が既に入所していたとしても、この欄が「なし」であれば、それぞれの賃貸借契約は引き継がないこととなりますので、一斉に退去を求めることができます。(退去を望まない場合には、新たに入居者との間で賃貸借契約を締結し直す必要がありますので、注意が必要です。)
逆にこの欄に「賃借権の表示」があった場合には、競落したとしても、その占有者の使用を認めなければなりません。ただ、賃貸人としての地位を承継しますので、その後の賃料は落札者(新所有者)が受けとることができます。

3.旧所有者(旧貸主)に差し入れてある敷金はどうなるのか?

仮に入居者が旧賃貸人に敷金を差し入れていた場合、「買受人が負担することとなる他人の権利」に記載された賃借権は競落人に対抗できる(使用を継続できる)こととなりますので、この場合競落人が賃貸人の地位を承継します。従って賃借人が退去する際の敷金の返還義務をも承継します。敷金が10万円であれば、入居者が退去した場合は10万円を返還しなければなりません。本来であれば旧賃貸人からその敷金10万円を受けとり、そのお金を入居者へ支払うことになりますが、競売にかかる程経済状態が悪化した人ですから、敷金を回収することは難しく、現実的には競落人が敷金を負担することがほとんどです。
従いまして、アパートを競落しようとしている人は、引き受けなければならない賃借権がある場合、その敷金を自分が負担して支払う覚悟で参加しなければなりません。
一方で、「買受人が負担することとなる他人の権利」の欄が「なし」であれば、実際に入居している人がいたとしても、退去の際に、敷金を返還する必要はありません。

4.対抗できる賃借権とそうでないものの違い

賃借中の建物が競落された場合、競落人が引き受けなければならない賃借権かどうかは、賃借人(アパートに住んでいる人)が部屋の引渡しを受けた時期によって異なります。
①建物の第一順位の抵当権設定登記よりも前にアパートの引渡しを受けていた場合
この場合は、建物賃借権が抵当権に優先しますので、建物が競落されても新賃貸人は賃借権を引き継がなければなりません。
②建物の第一順位の抵当権設定登記よりも後に引渡しを受けた場合
この場合は、新所有者は賃借権を引き継ぎませんので、競落後引渡命令によって、簡易に建物の引渡しを受けることが可能です。もっとも、建物の賃借人は、競売における買受けの時から6ヶ月間は建物の引渡しを猶予されます。

5.余談:アパート入居契約の重要事項説明

アパートを借りるときに宅建業者が重要事項説明をします。その際に、抵当権等担保権の有無を説明されます。私も学生時代アパートを借りる際、この説明を受けたのですが、何で説明するかわかりませんでした。これまでのお話しで皆様もご理解いただいたと思いますが、既に抵当権が設定されているアパートに入居した場合には、入居者の意思に関わりなく競売により退去を迫られるリスクがあるということになります。私が退去を迫られる入居者の立場だったら、困りますよね・・・

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 ・ マイベストプロ青森 コラム

【BLUE SKY】 VOL.10(最新号)発刊

当法人では、【不】定期にすでにお取引をいただいている企業様に対して、ニュースレターを発行しご郵送しております。

今回のテーマは「民事信託(家族信託)」と「位置指定道路」です。
民事信託は今専門家の間では注目されている分野です。そして「位置指定道路」は相談も多いし、トラブルも多い道路の問題です。


お時間の空いたときに是非ご覧下さい!


vol.10【民事信託(家族信託)・位置指定道路】
http://aozorahoumu.net/download/wakaba_news_10.pdf

 

成年後見制度を使うといくらかかるのですか?

成年後見制度の相談を受ける場合に必ず聞かれる質問が成年後見人の報酬に関する質問です。成年後見人が親族の場合(例えば父の後見人を娘が務める場合)には無報酬で行うことが多いと思いますが、相続や保険金請求などの法律問題がかかわる案件や、単に財産が多い場合には、裁判所は親族ではなく、研修を積んだ専門家(司法書士・弁護士・社会福祉士)を選任する傾向があります。現在全国の家庭裁判所に申し立てられる成年後見人選任事件において、専門家などの第三者が後見人を務める案件は全体の57.8%に及んでいます(平成25年の数値)。そもそも親族に後見人をやらせず、専門家を選任する理由については、前回のコラム「市民後見人について取材を受けました」をご覧下さい。

成年後見人の報酬には目安があるのです

専門家が成年後見人になった場合には報酬をいただくことになります。報酬の目安は青森家庭裁判所のホームページに、目立たないですがきちんと掲載されています。

報酬額のめやす
それによれば、成年後見人の月額基本報酬は2万円です。また管理する財産が1000~5000万円であれば月額3~5万円となっています。また相続などの特別の法律問題を解決した場合には、別途加算報酬があります。ただ、本人の財産が少ない場合には、月額1万円になったりと、本人の収支バランスを考えて、裁判所が報酬額を決定します。また、この報酬は1年間働いた分として、1年ごとに支払われることになります。

この報酬は誰が支払うのですか?

この成年後見人の報酬は誰が支払うのかですが、これは本人の財産から支弁されます。他の人(配偶者や子ども)に請求されることはありません。本人の財産がなくなった場合には、成年後見人の報酬はないこ(ボランティア)とになります。生活保護を受けている方の成年後見事件は市町村が後見人の報酬助成を予算立てしていることが多いので、市町村から頂くこともありますが、原則本人の財産から裁判所が決めた報酬額を頂くことになります。

親族の方からすれば、高い報酬だと思われるかもしれません。ただ成年後見人を務める私たちからみれば、他人の財産を預かるという大変責任の重い仕事ですので、その対価として報酬はいただくことになります。私たちもその報酬に見合った働きをしなければならないと考えています。


先日市民後見人について電話取材を受けました(6/17東奥日報朝刊に掲載されています)。コメントだけでは真意が伝わらないので、このコラムを利用して、市民後見人についての意見を述べたいと思います。なお紙面の都合上、市民後見人の制度については私が所属している公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートが発行している「リーガルサポートプレス」をご参照下さい(http://www.legal-support.or.jp/public/press.html

成年後見制度の現状(最高裁判所発表の統計から)

平成12年にスタートした成年後見制度。当初成年後見の申立事件(平成12年は9,007件)により選任された成年後見人の9割は配偶者、子などの親族であり、残り1割が司法書士・弁護士を始めとする第三者(専門職)後見人でありました。
しかしながら、第三者後見人の割合は徐々に上がり続け、平成25年1月~12月までの成年後見の申立事件(年34,548件)により選任された成年後見人等の約57.8%が第三者後見人となっています。成年後見人を誰にするのかというのは最終的に裁判官が決定します。仮に成年後見申立時に親族を候補者としたとしても、裁判官が第三者後見人を選任することができます。つまり、家庭裁判所は、親族後見より第三者後見を選択しているということがみてとれます。

なぜ第三者後見人が選ばれるのか

それは成年被後見人と成年後見人との間が親密であればある程、「公正な第三者」として財産を適切に管理するという意識が薄れていくからです。家庭裁判所から「成年後見人」という身分を与えられることにより、仮に夫や父親の財産であったとしても、成年被後見人の財産に「他人性」が生まれます。赤の他人の財産を管理することと同じになるのです。その財産を不適切に使ってしまった場合(例えば、被後見人の預金から後見人の生活のためにお金を引き出して使ってしまうことなど)、それは業務上横領に該当することになります。
最近司法書士や弁護士などの第三者後見人による業務上横領がニュースになっていますが、それは実は氷山の一角であり、このような不適切な財産管理により問題となる多くのケースが親族後見による横領事件なのです。

なぜ親族後見に不適切な財産管理が多いのか

例えば、こんな会話父と娘の会話。「おじいさん、今月たかし(孫)の塾の夏期講習があって講習代が10万円するの。大事な高校受験前の夏だし。なんとか受けさせたいの。援助してくれない。」「しょうがないな。たかしの将来のためだからな」と、娘は父から10万円を援助してもらいました。それを聞いたあなたは「それはおかしい!」とは思わないでしょう。でも、娘が父親の成年後見人だった場合、話は異なるのです。
「大学進学の冬期講習のお金10万円もかかるんだ?うちにはお金がないしなあ。たかしも頑張っているから受けさせたいな。そういえばおじいさん、たかしが中学の時の夏期講習のお金も出してくれたし、きっと(今はぼけちゃって聞けないけど)援助してもいいよって言ってくれるはず♪」と言って、成年被後見人の預金口座からお金を引き出し、講習代にあてました...これが不適切な財産管理の一例です。
前半の例のように、おじいさんが十分な判断能力があるのであれば、自由に自分の財産を使ってもよいので、娘に孫の教育資金をあげても良いのです(おじいさんと娘の間に10万円の贈与契約が成立したと評価することができます)。
財産管理においてお金を支出する場合のメルクマールはその支払いに「法的義務があるかないか」で判断をします。従って今回のケースについてもおじいさんに孫の教育費を支出する法的義務があるかないかということになります。言い換えれば、娘がおじいさんを「孫の教育資金10万円を支払え」という内容の裁判を提起し、娘が勝訴し、家庭裁判所がおじいさんに支払いを命じるのかという問題と同じことなのです。そのような支払命令が下されないということは皆さんお分かりかと思います。

後見人を監督するのは家庭裁判所です

後見人の仕事(適切な財産管理を含めた後見業務)を監督するのは家庭裁判所です。後見人による不適切な後見業務により、成年被後見人の財産に損害が出てしまった場合、監督責任を問われてもおかしくはない立場なのです。ですから、家庭裁判所としては他人の財産を預かるための基礎的な知識(研修)と倫理を兼ね備えた第三者に成年後見業務を担って欲しいため、第三者後見の割合が高くなってきているのです。
一方で、成年後見業務を扱う専門家の数は限られています。司法書士・弁護士の全員が成年後見業務を行っているわけではありません。司法書士でいえば全体の4分の1くらいです。成年後見業務は他人の財産を預かるという責任が重い仕事であり、また通常の不動産登記や会社登記と異なり、長期間(成年被後見人が亡くなるまで)の業務であります。加えて関係者(司法書士等は親族間の紛争性の高い案件が多いです)との調整役を担うことにもなります。報酬も仕事量に比して実入りが良い仕事とはいえないため(プロボノ活動の一つ)、成年後見業務を扱う司法書士等専門家の数も自然と限りがあります。そこで、今後の超高齢化社会に向けて、第三者後見人候補者の数を更に増加させなければ対応することができないことは目に見えています。司法書士でも弁護士でもない後見業務について知識と倫理を兼ね備えた人が必要となるのです。その筆頭株が「市民後見人」なのです。

市民後見人団体の乱立は問題あり

それでは市町村が市民を集めて独自に研修会を開催し「市民後見人」を養成したからといって、すぐに家庭裁判所がその人たちを第三者後見人として選任するでしょうか?
家庭裁判所が法律専門職以外の人を財産管理人に選任することはまれであります。原則は弁護士であり、現在多くの後見事件を扱っている司法書士や社会福祉士も研修制度の充実(司法書士は2年に1度12時間以上の研修を受けることが候補者登録要件となっている。社会福祉士会の「ぱあとなあ」も研修制度を用意している)と執務管理の徹底(司法書士が行った業務を家庭裁判所に報告する前に司法書士がチェックをする体制が整えられている)を長年続けることで家庭裁判所の信頼を得られ、現在は後見人候補者供給団体として認められているのです。
市民後見人は今始まったばかりの制度です。「私は沢山勉強をしてきましたので、後見人になることができます!」と言ったところで、まずは家庭裁判所の信頼を得なければ選任されないのです。また、誰か一人でも思い込み等により不適切な後見業務をしてしまい、結果として解任にされた場合、その団体の信頼は地に落ちるばかりか、そのようなことが続けば市民後見人自体の信頼もまた失われてしまうのです。
また、様々な市民後見の団体を立ち上げた場合、それぞれのルールで後見業務を形作ってしまうと、せっかく始まった市民後見制度は玉虫色となってしまいます。市民後見人はその後見業務をする人のスキルアップの為にあるのではなく(スキルや報酬を目当てに後見業務に付きたいのであれば司法書士や弁護士、社会福祉士の資格を取得し後見業務を行うべきであると考えます)、「地域福祉の実現」のために必要な制度であると考えています。自治体と法律専門職が必ず関与し、研修制度の充実と執務管理について一定のルールを定着させ、全国統一レベルで広げていかなければ、せっかくの市民後見人制度が脆くも崩れてしまうと危惧しているのです。

以上の理由から、市民後見人制度については「積極的・慎重論派」なのです。

お墓は誰が引き継ぐの?

誰もがかならず最後に行きつく先がお墓です。お墓の問題はどの家族においても避けては通れない問題です。お墓は、お寺の檀家となり墓を建てる方、お寺ではなく自治体が運営する霊園にお墓を作る方、お墓は作らず海に散骨する方、埋葬の仕方はいろいろですが、弔う気持ちは一緒です。「先祖代々」という一つのお墓に入ることもあれば、親とは別に自分たちの家族の墓を別に建てる方もいらっしゃいます。このような一家のお墓の他に祭具(仏壇など)、系譜 (家系図)といったもの(祭祀のための道具)がありますが、これらは一体誰が受け継ぐのでしょうか。

お墓の引き継ぎは「相続」ではありません

旧民法では、「家」を中心として?祖先の祭祀を絶やさないこと、?子孫の繁栄を祈ることが、相続の中でとても重要視されていましたので、祭祀を営むための祭具やお墓は、家督を相続するもの(戸主)が受け継ぐものと定められていました。
しかし、戦後の新しい民法では、「家」制度を解体し、 家督相続も廃止しました。 相続は共同相続制として、 祭祀の継承については相続からは切り離しました。

そのため、墓を守り祭具を預かり法事などの祭祀を主宰する者を誰にするかは、法的には相続とは別の問題として扱われるようになりました。ですから、お墓や祭具や系譜などは相続財産として算入されず、相続税の対象にもなりません。

現行民法の弊害

現行民法では祭祀承継について896、897条に規定しています。お墓や祭具を相続財産から切り離した上で、「慣習に従って、祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを承継する」と定め、但書きとして「被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者がこれを承継する」と規定しています。
このように、戦前の封建的家父長制を廃止するために、相続と祭祀継承を分離させた結果、現代の相続は財産分けだけが相続人の関心事となり、お墓を守ったり祖先を祭ることに対する責任が曖昧となってしまいました。

現在の家族や仕事の関係、これまでの親子間のわだかまりなどの様々な事情により、自分の親の墓であっても墓守りはしないというケースも見受けられます。そのように誰も墓守りをする方がいない場合はどうなるのか。法律では裁判所に祭祀承継者を決定してもらうように家庭裁判所へ申立をします。ただ家庭裁判所がある人を決定したとしても、その人がかたくなに拒否をする場合も予想されます。強制的に承継者とすることは事実上できませんので、落ち着くところは「永代供養」となります。

墓守りは大切な仕事

先祖代々の「家」の墓であるからこそ、お盆やお彼岸にお墓参りをする習慣が広く残っているとも考えられます。祭祀の承継は責任ある大切な仕事です。
承継する者はしきたりを覚えたり、さらに墓地の維持管理、法事の主宰、親類縁者への連絡などに結構お金や時間を割かなければならず、祭祀承継者は苦労する場面があります。しかし、それぞれの家でお墓を守り祭祀をとりおこなうという行為があるからこそ、人との縁が脈々とつながり、日本の文化が受け継がれていくこととなります。

祭祀(=墓守り)は、相続で受け継ぐもの、法律で受け継ぐものではなく、気持ちで受け継ぐ財産なのだと、祭祀承継の相談を受けるといつも思うところであります。

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