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古い仮差押……取下げできない?その③

2012.09.14
太田宜邦のblog
投稿者:太田 宜邦

 太田@あおばです。
 
 前回(http://aozorahoumu.net/google_plus/aoba_g/3349)からの続きです。
 
 想定外だった書記官のお言葉に、愕然とした太田ですが、「はいそうですか」ってわけにもいきません。
 
 太田「……そうはおっしゃいますが、仮差押命令正本もただの紙です。物理的に紛失することだって充分想定しうることでしょう。その書面1通が紛失しただけで、この土地が永久に塩漬けになってしまうというのも、何とも不合理ではないですか?」
 
 書記官「それも理解はできますが、しかし仮差押というのはあくまで一時的な権利保全の制度です。それを30年間、放置した両当事者の落ち度が招いた事態とも言えますので、その点についてもご理解をいただきたいのですが。」
 
 ……非常に丁寧な対応ではあるのですが、どうにも意見が噛みあいません。
 
 
 ご指摘通り、両当事者の責任が大きいのは、そりゃ確かでしょう。
 裁判所だって、30年経ってから唐突に事件をぶり返されても迷惑だ、と感じて当然ではあります。
 
 でも、債権者側からすれば、プレッシャーを掛ける目的でとりあえず仮差押を打ってはみたものの、実際の取り目が乏しいために、費用対効果の観点から、その後の本案訴訟や強制執行を進めることを諦めざるを得ないケースも多いはずです。
 ただ、諦めたとしても、あえて仮差押を取下げてやるのもシャクにさわることでしょうから、結果、放置となることはむしろ必然とも言えます。
 
 他方の債務者側からすれば、債権者が放置プレイ?を選んだ場合には、「起訴命令」で突っついてみて、債権者が本当にダウンしているなら「保全取消し」を勝ち取れる手段が用意されてはいます。
 しかし、それで刺激された債権者が息を吹き返して、破れかぶれに訴訟を起こしてくるという事態だって充分に想定されるわけです。ヤブヘビになるのが怖くて、できるだけそっと放置しておきたい、というのが人情というものではないでしょうか。
 
 そこを百歩譲って、「裁判所の書類が廃棄されるほど長期間に亘って事件を放置したこと」および「仮差押の正本を紛失したこと」の2点について、あくまで両当事者の非を鳴らさざるをえないとしても……。
 それに対するペナルティが、「永久に仮差押登記を抹消することができず、不動産の財産的価値が未来永劫ゼロのままに凍結されてしまう」ということになってしまうのは、社会的経済的に損失が大きく、著しく不均衡かつ不合理な結論ではないでしょうか。
 
 
 ……というような考えを、0.5秒ほど脳内で巡らせました太田ですが、ここで、あくまで紳士的に対応していただけている書記官と激論バトルになっても、あまり良い結果に繋がりません。
 ここは態勢を立て直して、いったん退くべきところです。
 
 太田「いやしかし、当事務所においても何度か同様の、仮差押の取下げは経験しています。正本があるケースの方が珍しかったはずですが……」
 書記官「……とりあえず、この場では、この登記簿上の情報だけで取下げを受理できるとは、回答できません。」
 太田「そうですか、当方としても唐突に伺って、その場ですぐにお返事をいただけるとまでは思ってませんでした。資料を置いていきますので、何とかご検討いただけますでしょうか」
 書記官「承りました。少々お時間をください。」

 ってな感じで、丁寧なご対応をいただいたことに感謝申し上げつつ(←これは本心です。担当書記官のご対応自体にはすごく好感がもてました。)、ゲタを預けたことで結論が軟化してくれることを期待して、裁判所をいったん後にしたのでした。
 
 ……この件、まだ続きます(^_^;)

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