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太田@あおばです。
いわゆる「建売住宅」について、偶然2社から同ジャンルの質問をいただいて検討した、ということがあったので、その検討結果を書き残しておこうと思います。
……検討の結果は、あまり芳しいものではなかったですけど(^_^;)
【前提】
建売(たてうり)というからには、ハウスメーカーが自前の仕様で建てた建物を、土地とセットで売るわけですな。反対用語としては「注文住宅」。
服で言えば、レディーメイド(既製品)であって、オーダーメイドとは違うぞと。
太田も経験がありますが、実際に注文住宅を建てるというのは、間取りがどうの、建具がどうの、カーテンの柄が……ってな感じで、注文者側にも相当の労力を要するイベントでございまして、これを理由に骨肉の夫婦喧嘩が繰り広げられたりするケースも少なくないようです(※太田家がそうだったわけではありません。)。
となると、これを避けたいと思う人がいるのも必然でございます。結構、あえて建売住宅を好んで選択するお客様が多いんだとか。
これを指して、「世の中には意外と、面倒臭がりやさんが多いもんで」というのが、ある業界人さんのコメントでしたが……。
さて、メーカーが完成させた建物を買うわけですから、権利変動としては売買による「所有権移転」です。
ですから、登記の手順としては、メーカーが建物につき「表題」「保存」と登記を起こして、土地建物セットで買主さんへ「所有権移転」登記するというのが本スジです。
しかし、まだ「表題」を済ませてない、未登記状態の建物であれば、原始所有者ではなく、現所有者名義で、直接「表題」を起こすことも可能だったりします。
建築確認の「確認済証」等でメーカーの所有権を証明し、さらにそのメーカー捺印の「売渡証書」あたりをつけて、買主に所有権が移っていることを証明して、「表題」を起こすわけですな。その方が手順が省けて、費用も安い、と。
ただし、問題はそのタイミングです。
厳密に言えば、取引慣例上、メーカーに売買代金が支払われた時点で、買主に所有権が移転します。しかしその時点で「表題」登記の手続をスタートさせると、申請から登記完了まで1週間くらいかかりまして、その後でないと「保存」そして住宅ローンの「設定」が申請できません。
金融機関としては、融資を実行した以上はできるだけその当日に「設定」を申請して欲しい、ということになりますから、このようなタイムラグが生じてしまうことは許されません。
ですので、売買代金の「決済日」に、「保存」「設定」ができるように、前もって買主名義で「表題」を起こしておくわけです。
メーカーとしては、代金を貰ってないのに未登記建物の「売渡証書」を出すことになりますが、これは金融機関の手前、しょうがないと。
理論構成としては、「便宜上、代金支払い前でも所有権が移転する旨の特約があった」ということになりますね。
これが太田の知る限り、(すくなくとも津軽地域では)確立された「建売住宅」の登記スキームです。
前提が長くなりました。本題はこれからです(^_^;)。
【論点:表題をメーカーで起こしている場合?】
すでにメーカー名義で表題登記が起きちゃっている場合には、上述のようなスキームを用いることができません。
不動産登記法の74条で、「保存」登記を申請できる者の要件が限定列挙されています。
表題部所有者以外の者が、「保存」の申請人になれるのは、
- 「区分建物」や「収用」のような特殊なケースを除いては、
- 「表題部所有者の相続人等」か、
- 「所有権を有することが確定判決によって確認された者」に限られているのです。
よって、結論としてはこの場合、直接に買主名義で「保存」を行うことはできず、メーカー名義の「保存」のうえで、「移転」「設定」と進める必要があります。
ただ、この3件は連件申請できますので、代金決済を見届けてから申請すればよく、前もって登記を起こすなどの小細工?は要らなくなりますけどね。
しかしまたこの設例、何でメーカー名の表題だけ済ませちゃったんでしょうかねぇ? 特にその点は突っ込んでお伺いしませんでしたが……。
【論点:前もっての「表題」のリスクは?】
上述のスキームによれば、メーカーの立場から見ると、売買代金を貰ってないのに、建物の所有権が買主に移ったというタテマエ……じゃなかった(^_^;)、理論構成を取らざるを得ません。
よって、実際に売買代金をゲットできなかった場合はどうするよ? というリスクが生じることになります。
そのリスクを何らかのかたちで保全することはできないだろうか?……という、メーカーの立場からのご質問でございました。
ただ、この点、結論を先に述べてしまいますと……。
リスクを心配するなら、本スジ通り、メーカー名義で「保存」までやっちゃうしかないんじゃない?
……ということになっちゃいますねぇ、ミもフタもない回答で恐縮なのですが(^_^;)。リスクとコスト、どちらを回避するか、の選択の問題と言えます。
でも、せっかくご質問いただいたわけですから、いろいろ考えてはみたのですけれども……。
その検討の成果は、 (ここまでで、だいぶ長文になっちゃったので)「次回へ続く」ということにさせていただきます。